本家いなてい

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日本ブログ村の政治ブログ・民進党(旧民主党・旧維新の党)で常時1位の誉れ高いブログ(なおエントリー数は2ブログ)

プッチンプリン出荷停止!!

 

プッチンプリンをはじめとした、江崎グリコの商品が軒並み出荷停止に陥っています。復活予定は5月中旬とのこと。

 

江崎グリコは基幹システム(ERPシステム)としておそらく SAP R/3 ECC6.0 を使用しており、今回はこのバージョンアップとして SAP S/4 HANA に変更。カットオーバ直後にデータ不整合障害が発生しリカバリを実施。いったんは業務を再開したものの、実は不整合の規模が想定よりはるかに大きく、障害再発によりふたたび停止。

 

という流れだと思います。

 

このへんを、ニュース記事をもとに掘り下げてみます。BASIS として数々の SAP インスタンスを闇に葬ってきたこの私が!!積年の恨みとともにお届けします。

 

 

 

江崎グリコの商品が軒並み出荷停止に

 

www.jiji.com

 

 キリンビバレッジは23日、江崎グリコに販売を委託している紙パック入りの飲料「トロピカーナ」や「無添加野菜」の出荷を停止していると明らかにした。


江崎グリコの商品が、軒並み出荷停止となっています。


4月頭に一度出荷停止がかかりすぐ復旧していたのですが、再度の出荷停止となり、トラブル解消まで長期戦となりそうです。

 

ERP というのは元々生産管理から派生した、資材所要計画システム (MRP) から発展しています。たまに会計系システムをして ERP を名乗っているケースが散見されますが、生産や物流といったロジ系があってこそ ERP です。

 

なので ERP がこけると生産もこけます。

 

 

 

原因は「基幹システム」を SAP S/4 HANA に切り替えたことによるトラブルか?

 

xtech.nikkei.com

 

 江崎グリコの基幹システムで障害が続いている。物流センターでの出荷業務が一部停止し、看板商品である「カフェオーレ」や「プッチンプリン」など冷蔵商品が出荷できない状態に陥っている。原因は旧基幹システムから独SAPの「SAP S/4HANA」への切り替えに伴うトラブルだ。


原因は「基幹システム」を SAP S/4 HANA に切り替えたことによるトラブルのようです。

 

用語として押さえておきたいのは、まず「独SAP」。これはドイツのSAP社(SAP DE)という意味です。「基幹システム」というのはここでは ERP システムをします。企業の生産と財務をすべて管理できるシステムです。SAP社が作った「基幹システム」というのが、旧バージョンを SAP R/3 (ERP) と呼び、新バージョンを SAP S/4 HANA と呼びます。

 

つまり今回は「SAP の旧バージョンを新バージョンに切り替えたら障害が起きたよ」という意味ですが、これが言葉とは裏腹になかなか大変。

 

SAP R/3 はデータベースが外付けで、Oracle や SQLServer とった DBMS の上で動いています。他方 SAP S/4 HANA は、SAP 社独自のインメモリデータベースを内包して動いています。

 

SAP R/3 のシステムはそれ単体で動いていることは少なく、システム外部の複数の DB などと連動しています。これを S/4 HANA に移行する場合、「SAP 以外を含めてすべて S/4 に移行しないとメリットはない」と言われています。おそらく今回も、それらを含めての移行だったのではないかと思います。

 

「ERP を S/4 HANA に刷新する」と言った場合、刷新対象が SAP システムのみにとどまることはまず無く、社内の DB システムなどもすべて刷新しなければならない・・・ということで、コンサルもベンダもみんな嫌がる S/4 HANA 導入。

 

ところが恐ろしいことに、SAP R/4 のサポート期限は 2025 年まで(のちに 2027年まで延命)と SAP 社が宣言。このため、ユーザ企業はおぼ半強制的にこの切り替え作業を行わなければならなくなりました。

 

誰もがリスクと困難を理解していながら、ほぼ強制的にリプレースを行わなければならなくなった。このへんが背景にあります。

 

 


デロイトトーマツの名前が出てきたが・・・

 

diamond.jp

 

 これほどまでのトラブルを引き起こすきっかけとなった基幹システムの切り替えプロジェクトは、どのベンダーが手掛けたのか。江崎グリコの広報は「複数のベンダーが携わったが、個社名は公表していない」とするが、ダイヤモンド編集部の取材で、プロジェクトを担った主幹ベンダーがデロイト トーマツ コンサルティングであることが判明した。

 

ダイヤモンドオンラインによると、今回の移行を手動した「主幹ベンダ」としてデロイトトーマツの名前が出ていました。

 

デロイトさんの立場としては、PMO(実質的なPM)として全体的な日程やリソース、課題を管理していたものと思います。ただデロイトの立場はプロジェクト全体の進行やリソースの割り当てを行うもので、移行の技術的な詳細はさほど把握していないもののと思います。無論、移行前後での整合性が担保できるかは検証していたはず。

 

 

kabutan.jp

 

18日に物流センターにおける業務の一部を再開したものの、出荷に関するデータの不整合などが発生。想定していた受注に対して処理が間に合わず、出荷業務を再度停止した。

 

「データの不整合」というのもかなり曖昧です。製造指示に対する製造量や出荷量がことなれば当然「不整合」ですが、単に同一システム内の2か所の項目が不一致だった、という例なども「不整合」になります。

 

これは想像なので今回の件とは異なると思いますが、移行であればアドオンテーブル(SAP標準ではなく、ユーザ企業が独自で作成したテーブル)が自動で移行されず、手動で移行したら他のデータと整合性が取れなくなったとか。新設であれば、旧システム(SAP以外)を稼働させた状態で SAP S/4 HANAに移行したところ、データ取得タイミングにより不整合が発生したとか。

 

 

blogs.opentext.jp

 

多くの人に愛されるポッキー、ビスコなどの菓子類の製造・販売を手がける江崎グリコ。働き方の多様化に取り組む中でコロナ禍に直面した同社は、請求書の電子化を目指してOpenText Archiving and Document Access for SAP Solutionsを導入。導入から8カ月で請求書処理の電子化率100%を達成しました。

 

江崎グリコはOpenText を入れてるみたいなので、もともと SAP R/3 を使っていたということでしょう。

 

OpenText は電子帳票保存、要は旧来は紙で出力されてきた帳票類を電子で保存し、買い残されなように工夫して永続的に保管しましょう、というシステムです。これの SAP 連携オプションを導入した経緯がありますので、江崎グリコではもともと SAP R/3 を使っていたんだろうなと。