久しぶりにアクアネタ。
京都の電子部品メーカーと海洋高校が、牡蠣のノロウィルス除去に成功したということです。
泡でウィルス除去に成功
極小の泡を使って生食用のカキに含まれるノロウイルスを体外に排出させる新たな技術を開発したと京都市の精密機器メーカーが発表しました。
NHKの記事によると、京都の電子部品メーカー「トスレック」が、京都海洋高校との研究の末、「牡蠣のノロウィルスを体外に排出させる技術を開発した」とのことです。
おそらくプロテインスキマーの高性能版
これですが、「泡」を使って「静電気」で「ウィルスを吸着させる」という事ですので、まずプロテインスキマーの事でしょうね。いわゆる「波の花」発生装置です。
昨年末に話題となった、「サンシャイン水族館の魚大量死」では、この「プロテインスキマーを止めたために酸欠を起こした」ことが原因ではないかとされていました。
ただプロテインスキマーの本来の役割は、マイクロバブル(直径が1mmの1/1000の泡)を発生させ、その表面に蛋白質を吸着させて水槽外に排出させることにあります。
泡の表面はマイナス帯電しますので、プラス帯電している蛋白質などが吸着され、泡に乗っかって水槽の外に出されちゃうんですね。
水槽内の生物は蛋白質やアンモニアを排泄します。蛋白質も分解されてアンモニアになります。アンモニアは生物にとって有害なのですが、蛋白質の時点で水槽外に出せばOK。*1
「蛋白質が吸着される」と書きましたが、病原菌なども蛋白質ですので、泡に吸着されて水槽外に出されちゃうんですね。
この泡は、小さければ小さいほど全体の表面積は増え、吸着効率がよくなります。今回の発表は、この泡を小さくしたところがポイントなんじゃないかと思います。
でもNHKの記事と京都新聞の記事で内容が違うぞ・・・?
しかし、NHKの記事と京都新聞の記事では、内容が異なっていました。なんだこりゃ?
NHKでは「1ミリの1000分の1未満の大きさの極小の泡を専用の機器で発生させ、」と報道しています。まあ「1/1000ミリ未満」なので「マイクロバブルよりは小さいよ」程度の意味。
この記事だと、「通常のプロテインスキマーよりちょっと性能いいよ」程度に思えます。
カキのノロウイルス、極小の泡で除去 京都の企業が開発 : 京都新聞
直径1ナノメートル(ナノは10億分の1)の微細な気泡「ウルトラファインバブル」を、均一に発生させる同社独自の装置を活用した。
京都新聞では「マイクロファインバブル」つまり「直径1/1,000,000mm=ナノメートル」の泡、としていますので、通常のものより1/1000の大きさの泡を発生させているよ、といっているように見えます。
まあ、NHKの記事の通りであれば記者会見するほどの違いも出てこないと思いますので、京都新聞の記事のほうが正確なんじゃないかと思います。
しかし、既存技術との効力の差は・・・正直よく分からん!
プロテインスキマーの効力により、ノロウィルスを牡蠣の体外に排出させることは可能だと思います。思います・・・ではなく、可能です!と言い切ったほうがいいでしょうね。
実際、牡蠣やホタテの養殖現場では、プロテインスキマーを使った殺菌を行ってたりするんでよね。ただ、今回の記事では殺菌効率の対象を「殺菌灯(水中を漂う細菌を、紫外線で殺す)」と比較しているだけで、既存のプロテインスキマーとの差がわかりませんでした。
泡の大きさの違いがポイントだと思いますので、正直ここの差がわからないと、うーん・・・?となっちゃうんですよね。
蛇足ですが、原発の冷却水なんかも巨大プロテインスキマーで濾過してるみたいです。
*1:アンモニアは吸着しなくなりますが、曝気のおかげで若干は飛びます。