
日本のインターネット上で長年にわたって知られてきた「淫夢」シリーズをめぐり、中国で思わぬ騒動が起きています。
中国の動画サイトなどで、淫夢関連のコンテンツが「宗教」に関係する情報として扱われたとする報告が相次ぎ、日本のネット上では「中国で淫夢が宗教認定された」と大きな話題になっています。
今回、注目を集めているのは、「INMU KING」と呼ばれる淫夢関連コンテンツです。
日本のインターネット文化を知る人の間では、「淫夢」は特定の映像作品を起点として発展したネットミームとして知られています。
独特のセリフや登場人物がネット上で繰り返し引用され、長年にわたってさまざまなパロディーや二次創作が生み出されてきました。
ところが、中国の動画サイト「Bilibili」などで、この関連コンテンツを投稿しようとした際、中国のインターネット上における宗教情報の規制に関係する警告や審査が行われたとの情報が拡散しました。
これを受け、日本のSNSでは「淫夢が中国政府によって宗教として認定された」「野獣先輩がついに神になった」など、半ば冗談を交えた反応が広がっています。
ただし、ここで注意が必要です。
現時点で確認されている情報からは、中国政府が「淫夢」という宗教を正式な宗教団体として認可したという事実を意味するわけではありません。
「淫夢教」という宗教法人や宗教団体が中国政府によって公認された、と理解するのは適切ではありません。
背景にあると考えられるのが、中国におけるインターネット上の宗教関連情報に対する厳しい規制です。
中国では「インターネット宗教情報サービス管理弁法」が施行されており、ネット上で宗教に関する情報を提供したり、宗教活動を行ったりする場合には一定の規制が設けられています。
動画や画像などについても、内容によっては自動システムや人による審査の対象になるとみられています。
今回の騒動では、淫夢関連の映像や「INMU KING」の演出に含まれる宗教的なモチーフが、こうした中国側のコンテンツ審査システムによって「宗教関連」と判断された可能性が指摘されています。
キリスト教などを連想させる表現や、神、救世主、罪、救済などを想起させる演出が含まれていることから、単なる日本のネットミームではなく、宗教に関係するコンテンツとして機械的に分類された可能性があります。
つまり、今回起きたとされる現象は、「中国政府が淫夢を宗教として認定した」というよりも、「中国のネット規制システムが淫夢関連コンテンツを宗教情報として扱った」という理解のほうが実態に近いとみられます。
それでも、日本のネットユーザーからすれば極めて異例の出来事です。
日本国内では長年にわたりネットミームとして消費されてきたコンテンツが、国境を越えた途端に「宗教」という全く異なるカテゴリーで扱われる可能性が出てきたためです。
さらに興味深いのは、中国側のコンテンツ審査が、日本独自のインターネット文化をどのように認識しているのかという点です。
日本ではネットユーザー同士が共有する文脈や、長年のミームとして成立している背景を知らなければ意味を理解しにくい表現であっても、審査システムがそうした文化的背景まで正確に把握できるとは限りません。
その結果、映像に含まれる特定の表現だけを抽出し、宗教関連のコンテンツとして判定することも考えられます。
SNS上では、「中国のAI審査が淫夢を本物の宗教だと思ってしまったのではないか」「日本ではネットミームなのに、中国では宗教規制に引っかかるのか」といった驚きの声が相次いでいます。
一方で、実際にどのような理由で審査対象になったのかについて、中国当局が「淫夢を宗教と認定した」と明確に説明したわけではありません。
そのため、現段階では「中国で淫夢が宗教認定された」という表現は、ネット上の話題を強く印象づけるための、いわばネットニュース的な表現として受け止める必要があります。
とはいえ、今回の一件は単なるネット上の珍事ではありません。
国ごとに異なるコンテンツ規制と、日本独自のネット文化が衝突した結果、国内では誰も宗教だと思っていなかったコンテンツが、海外の規制システムによって全く別の意味を持つものとして分類される可能性を示しています。
「淫夢が宗教になった」というニュースだけを見れば、思わず笑ってしまうような話です。
しかし、その裏側には、中国の厳格なインターネット規制と、国境を越えることで意味や扱いが変わってしまうネット文化の特殊性があります。
果たして中国側のシステムは、本当に淫夢を「宗教」と認識したのでしょうか。
それとも、宗教的な表現を含む映像を機械的に分類しただけなのでしょうか。
今後、具体的な審査画面や中国側の説明が明らかになれば、「淫夢宗教認定」の真相がさらに見えてくる可能性があります。