
与党が第3号被保険者制度を縮小する方向で検討している件と、それに伴って広がっているデマについて、社会保障制度の仕組みを踏まえて説明します。
そもそも「第3号被保険者」とは
第3号被保険者とは、会社員や公務員などの第2号被保険者に扶養される配偶者で、自分の分の保険料を払わずに基礎年金の受給資格を持つ仕組みのことです。
この制度は、専業主婦にも将来の年金権を確保するため40年ほど前に導入されましたが、共働き世帯の増加やパート労働者の増加とともに、制度の不公平感や年金財源の問題が指摘されてきました。
与党の「縮小」検討の内容
自民党と日本維新の会は2026年4月13日の社会保障制度改革に関する実務者協議で、第3号被保険者制度の対象を「縮小する方向」で検討することに一致しました。
両党は連立合意書に「第3号被保険者について、対象を縮小する方向で検討する」と明記し、2026年度中に具体的な制度設計の骨子をまとめる予定としています。
ただし、現時点では「制度を廃止する」という決定はなく、「対象をどう狭めるか」「年収の上限をどう変えるか」など、具体的な改革案については国民的理解を前提に慎重な議論が必要としています。
すでに進んでいる縮小の流れ
第3号被保険者を縮小する動きは近年始まったものではありません。
2022年10月から、従業員101人以上の企業で週20時間以上など一定条件を満たすパートは、年収130万円未満ではなく「106万円未満」でなければ第3号になれないよう改正されました。
さらに2024年10月以降、対象となる企業の規模が「51人以上」に引き下げられ、より多くのパートが厚生年金の第2号被保険者に移行し、第3号の対象者が少しずつ減ってきました。
代表的なデマ事例
この議論がSNSなどに出回ると、次のような誤解やデマが広がります。
「第3号が全部なくなると、主婦の年金がゼロになる」
→ 実際は制度を廃止するか縮小するかの議論の段階であり、最終決定されていません。
「現役世代や子育て世代の主婦が受給していた年金が、受給できなくなる」
→ 社会保障制度を知らない場合、第3号が縮小されると「主婦は年金がもらえなくなる」と勘違いすることがあります。しかし、そもそも老齢年金の受給開始は早くても60歳であり、障害年金の受給は障害認定される必要があり、また遺族年金はそもそも本人は受給できません。
「子育て世代の主婦は、いまのうちに必ず働かなければ生涯年金額が減る」
→ 年金は積み上げた期間や加入形態によって決まり、第3号が縮小されても、厚生年金や国民年金に加入していれば年金額は減りません。
「維新が主張するのは、国民年金の大幅削減」
→ 日本維新の会は第3号の廃止や縮小を主張していますが、これは制度の見直しの一環であり、国民年金全体の削減とは異なります。
社会保障制度を知らないケースの誤解
多くのデマは、社会保障制度の仕組みを正しく理解していないまま不安が広がることで生まれます。
例えば、「第3号被保険者」の意味や、国民年金と厚生年金の違いを知らなければ、「制度が縮小される=年金がなくなる」とすぐに結論付けられてしまいます。
また、現役世代や子育て世代の主婦に対して、「子育て中に働かなければ年金が減る」といった過度な誘導は、制度の仕組みを無視した誤解を助長します。
今後の議論のポイント
与党側は、第3号の縮小を進めると同時に、パートなど第3号から第2号に移行する人の年金負担や、負担の増加をどう補うかを踏まえた議論が必要としています。
一方で、高齢者の生活資金や、共働き家庭のキャリア形成への影響を意識した慎重な議論が求められており、今後は「年収の上限をどうするか」「誰を対象にするか」を具体的に詰めることになります。
おおざっぱに言うと、今の段階で「3号がなくなる」と断定するのは間違いで、「制度の見直しに向けた方向性が示され、それをどう具体化するかを国民的議論する必要がある」という位置付けだと理解しておくと混乱しにくいです。