
2025年10月21日に召集された臨時国会において、自民党の高市早苗総裁(64歳)が、衆参両院の首相指名選挙を経て、第104代首相に選出されました。
この選出により、高市氏は憲政史上初の女性首相となります。
衆院本会議の開票結果が発表された際、高市氏は厳しい表情で壇上を見つめていましたが、選出が確定した瞬間、自席で立ち上がり、周囲に6回頭を下げ、目を閉じて喜びを噛みしめる様子が見られました。
首相指名選挙は衆議院と参議院それぞれで行われました。
衆議院本会議では、投票総数465票のうち、高市氏が過半数(233票)を上回る237票を獲得し、首相に指名されました。
自民党(196議席)と連立を組む日本維新の会(35議席)の合計は231議席であるため、中継番組では234票程度とみられていたものの、実際には無所属議員などが投票し、それを上回る得票となりました。
その他の候補者のうち、立憲民主党の野田佳彦氏が149票、国民民主党の玉木雄一郎氏が28票、公明党の斉藤鉄夫氏が24票を獲得しました。
一方、参議院本会議では、1回目の投票で高市氏が123票にとどまり、過半数(124票)に1票届かず、決選投票に進みました。
しかし、憲法の規定により衆議院の結果が優先されるため、この時点で高市氏が首相に指名される公算は大きくなっていました。
参議院の決選投票では125票を獲得し、第104代首相に正式に選出されました。
高市氏は首相指名後、ただちに組閣に取り掛かり、皇居での首相親任式と閣僚認証式を経て、同日夜に高市内閣が正式に発足する予定です。
新政権は、高市氏が総裁選で争った議員も含め、「全員活躍」「全世代総力結集」を基本方針として運営されます。
総裁選を争った4候補(小林鷹之氏、茂木敏光氏、林芳正氏、小泉進次郎氏)はいずれも党三役か閣僚として処遇される方針です。
新内閣の閣僚人事では、林芳正前官房長官(64歳)が総務相に、小泉進次郎前農林水産相(44歳)が防衛相に、片山さつき元地方創生相(66歳)が財務相に起用される方針です。
また、茂木敏充元幹事長を外相に、木原稔前防衛相を官房長官に、鈴木憲和復興副大臣を農相に充てる方針も示されています。
さらに、高市氏を支援した小野田紀美参院議員(42歳)は経済安全保障相として初入閣する方針です。
高市氏は、外国人政策を統括する担当大臣を新設する方針も示しており、総裁選でも外国人政策の「司令塔」機能の強化と法整備を訴えていました。
この新政権は、自民党と日本維新の会との連立政権として発足します。
高市総裁と維新の吉村洋文代表は10月20日に連立政権樹立の合意書に署名しました。
この合意には、臨時国会での衆院議員定数1割削減法案の提出・成立を目指すことや、来年の通常国会での「副首都構想」の法案成立、期間限定での食品の消費税率0%検討などが盛り込まれています。
一方、26年間続いた自公連立に終止符が打たれ、公明党は新政権からの連立離脱を表明しています。
維新からは閣僚の起用は見送られ、閣外協力にとどまりますが、首相補佐官には維新の遠藤敬国会対策委員長が起用され、首相と維新のパイプ役を担うことになります。
女性初の首相誕生に伴い、高市氏の夫である山本拓・元衆院議員(73歳)が、日本初の「ファースト・ジェントルマン」となりました。
山本氏は福井県鯖江市出身で、県議を経て1990年に衆院選で初当選し、衆院議員を8期務めた高市氏の先輩にあたります。
二人はかつて自民党旧森派(清和政策研究会)に共に所属していました。
2004年に結婚した際、高市氏が料理が苦手だったため、調理師免許を持つ山本氏が「一生おいしいものを食べさせる」とプロポーズし、結婚後は「台所は僕の城なので入らないで」と自ら食事を作り続けたといいます。
二人は「政治的スタンスの違い」から2017年に一度離婚しましたが、高市氏が2021年の総裁選に出馬した際には山本氏が全面支援し、直後の衆院選で山本氏自身が落選したのを機に再び婚姻届を提出しました。
この再婚の際、戸籍姓はじゃんけんで決められ、山本氏は「高市」に改姓した経緯があります。
現在、二人は東京・赤坂の衆院議員宿舎で二人暮らしをしており、山本氏は昨年10月の衆院選で落選後、脳梗塞などを発症したため、高市氏がリハビリ生活を支えています。
山本氏は高市首相の誕生を受け、「ほっとしている」と述べ、今後は「目立たない『ステルス旦那』という形でしっかり支えていきたい」と強調しました。
高市総裁は、政務担当の首相秘書官に、自民党職員である橘高志氏を充てる方針を固めています。
党職員が首相秘書官に起用されるのは異例の措置です。
橘氏は現在、自民党総務局の事務部長代行を務め、党務全般を担当しており、過去には外交・安全保障分野の担当経験もあります。
高市氏が女性首相に選出されたことにより、先進7カ国(G7)の中で、大統領や首相などの女性首脳を輩出していないのは米国のみとなりました。
国連女性機関の2025年6月時点の報告によると、国連加盟193カ国のうち、現職の女性首脳がいるのは27カ国で、これまで女性が政府のトップを務めたことがある国は60カ国(193カ国の3割超)に上ります。
世界では、イタリアのメローニ首相やメキシコのシェインバウム大統領などが現職の女性首脳として活躍しています。