
海外投資家は、今回の自民党新総裁の誕生が、史上最高値圏で足踏みしている日本株を再び上昇させる起爆剤になると楽観的に期待しています。
5人の候補で争われる総裁選の結果判明により、投資家の様子見姿勢を助長してきた日本の政治的不透明感はいったん和らぐことになります。
主要な日本株銘柄の値動きを示す東証株価指数(TOPIX)は7月以降、日米関税交渉の合意などを好感して最高値を更新してきましたが、総裁選が接近した直近一週間ほどは、結果を見極めたいとの姿勢から上昇の勢いを失っていました。
この政治的不透明感の後退は、投資家から歓迎される可能性があります。
特に、有力候補と目されている高市早苗前経済安全保障相や小泉進次郎農林水産相の二人は、物価高対策としての減税や現金給付、政府支出の拡大など成長重視の考えを示しており、株式市場にプラスに働くと予想する向きが多いです。
米マシューズ・インターナショナル・キャピタル・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ハン・ドンフン氏は、総裁選の候補者らが「市場寄りのアジェンダ期待、消費者マインドの改善、政治的混乱の後退をもたらす」と予測しています。
今回の海外勢による楽観ムードの主要な支えとなっているのは、前任の石破茂首相よりも安定感のあるリーダーが誕生するとの期待です。
石破氏は、国政選挙連敗の責任を問われ、昨年の総裁選勝利からおよそ1年でリーダーの座から降りましたが、彼自身が「財政面での緊縮姿勢」から、市場にとって人気のある選択肢ではありませんでした。
石破氏は首相在任中、就任間もない昨年10月に当初の方針を覆して解散総選挙に踏み切り、2009年に自民党が政権を失って以来の敗北を喫し、さらに今年7月の参院選でも与党(自民・公明)が過半数を割り込むなど、政治的な混乱が続きました。
英ポーラー・キャピタルのクリス・スミス氏は、「誰が後任になっても、石破氏よりは良い環境になるだろう」と話しており、石破氏の選挙失敗以降市場にあった政治への懸念は、後継確定と拡張的な財政政策への期待によって解消され、中長期的に株式市場の追い風になるとみられています。
ゴールドマン・サックス証券の調査によると、自民党総裁選でのリーダー交代を機に相場が強含んだケースは多く、直近7回の首相交代のうち、4回は交代後の12カ月間でTOPIXが上昇したという歴史的な背景があります。
ゴールドマンのストラテジストらはこの傾向を踏まえ、総裁選後に国内政治の先行き改善が見込まれるとし、TOPIXの12カ月先予想を3200ポイントから3400ポイントに引き上げました。
ただし、総裁選の結果によっては投資家心理が冷え込むリスクも存在します。
もし自民党が「小林鷹之元経済安保相のようなサプライズ候補を選んだ場合」、それは有権者や市場とずれていることを示す恐れがあるとの指摘があります。
実際に、昨年の総裁選では、高市氏が1回目の投票で獲得票数1位であったにもかかわらず、決選投票で石破氏が予想外の勝利を収めた際、石破氏が財政規律重視派とみられていたことも重なり、翌営業日のTOPIXは3%以上、日経平均株価は5%弱急落したという前例があります。
それでも、ポーラー・キャピタルのスミス氏は、仮にサプライズがあったとしても、日本の長期投資家は首相交代に慣れており、大きな動揺はないとの認識を示しています。
2000年以降だけでも首相の数は12人に上ることから、自民党は過去にも同じ状況から立ち直ってきたと指摘し、投資家は今回の総裁選を「革命ではなく、進化として受け止める」だろうと述べています。
なお、共同通信が9月27日、28日に総裁選の投票資格がある人を対象に行った調査では、新総裁にふさわしい候補者のトップは高市氏で、国会議員への調査で最も支持を集めているのが小泉氏でした。
野党の首相指名選挙を巡る協議が不調に終わっているため、新総裁が新首相に就く公算が大きいと報じられています。