米国とウクライナの高官協議が、サウジアラビアのジッダで行われました。内容は、米国によるウクライナへの軍事支援再開、そして停戦案の受け入れ準備など、最新の動向についてです。
米ウクライナ会談
ウクライナは、米国が提示した30日間の停戦案を受け入れる用意を示しました。この決定は、サウジアラビアのジッダで11日に行われた米国との会合で明らかにされました。
この動きは、ロシア軍の占領下にある領土の武力奪還を事実上断念する用意があることを意味すると見られています。
侵略された側であるウクライナにとって苦渋の決断ですが、戦況が不利であり、国力も疲弊しているため、譲歩してでも米国の支持を取り付け、将来的な対露交渉で「引き分け」に近い条件での停戦を目指していると考えられます。
ウクライナ、領土で妥協か
これまで、ゼレンスキー大統領は「領土は放棄しない」という原則的な立場を維持してきましたが、過去1年半以上の戦闘でウクライナ軍が兵力や火力で勝るロシア軍に劣勢を強いられている現状や、国内インフラの損傷、国民の国外避難による人口減少、そして欧米諸国からの支援がなければ国家として立ち行かない瀬戸際の状況などを考慮し、方針転換に至った可能性があります。世論調査で領土的譲歩をしてでも停戦すべきだとの声が強まっていることや、米国からの停戦圧力も影響したと考えられています。
米国、軍事支援再開の見込み
このウクライナの姿勢を受けて、米国は一時停止していたウクライナへの軍事支援と軍事情報の共有を再開する方針を示しました。共同声明では、両国が永続的な平和に向けた取り組みを開始すべき時だという認識で一致し、ウクライナが米国提案の30日間の即時かつ暫定的な停戦を受け入れる用意があることが明らかにされました。
この停戦は当事者の合意によって延長が可能であり、ロシアが受け入れ、同時に実施することが条件となります。
米国の反応
ルビオ米国務長官は、ウクライナが和平に向けて具体的な一歩を踏み出したと評価し、ロシア側の歩み寄りを促しました。ウォルツ米大統領補佐官(国家安全保障担当)は、今後数日以内にロシア側と協議する意向を示しており、トランプ大統領もプーチン大統領との対話に意欲を見せています。
ただし、現時点では具体的な停戦プロセスは示されておらず、ロシアがこの停戦案に同意するかどうかが今後の焦点となります。ゼレンスキー大統領は、ロシアが同意すれば停戦は直ちに発効すると強調し、米側の停戦案の対象範囲は海上だけでなく「前線全体」だと説明しています。
今後の展望
ウクライナは停戦に当たり、ロシアの再侵略を防ぐ「安全の保証」が不可欠だと考えており、また、将来的な対露交渉でカードを握るためにも、占領された領土を自ら進んで放棄しない可能性が高いです。
ウクライナは11日にロシア各地へ過去最大規模のドローン攻撃を行い、依然としてロシア国内への攻撃能力があることを示しており、軍事支援の再開も背景に、ロシアに譲歩を迫りたい考えがあると見られます。
一方、ロシア側は、30日間の暫定的な停戦について、西部クルスク州からウクライナ軍が撤退しない限り停戦協議には応じないと米国側に提示しているとの情報もあり、ロシア軍が目標を達成するまで戦闘を続けるとの見通しも出ています。
しかし、停戦協議を受け入れないと、プーチン大統領と対話する姿勢を見せてきたトランプ政権内でロシアに対する批判が強まる可能性もあり、ロシアにとっても難しい局面を迎えているとの見方もあります。
トランプ大統領の過去の対露政策と現在の姿勢の変化も注目されます。トランプ氏はかつてウクライナに軍事支援を提供し、ロシアに対して制裁も科しましたが、プーチン大統領との個人的な繋がりを深め、現在ではロシアの要求を容認または強く要求するような姿勢を見せています。
ウクライナへの軍事的・情報提供の支援を停止したこともあり、ウクライナ側はトランプ氏が自国を見捨て、敵に寝返ったのではないかと懸念している可能性も指摘されています。
国際社会は、今回の米ウクライナ協議の結果を注視しており、EUのフォンデアライエン委員長やイギリスのスターマー首相、フランスのマクロン大統領らは、ボールはロシア側にあるとし、ロシアが停戦と戦闘の終結に同意することを求めています。
総じて、ウクライナは戦況の悪化と国力の疲弊から、領土奪還という当初の目標を事実上放棄し、米国が仲介する形での停戦合意を目指す方向に転換したと見られます。
米国はウクライナのこの動きを評価し、軍事支援を再開しましたが、停戦が実現するかどうかはロシアの今後の対応にかかっています。また、トランプ大統領のロシアに対する姿勢も、今後の展開に大きな影響を与える可能性があります。