国民民主党の玉木雄一郎氏が、代表職に復帰しました。
玉木雄一郎氏は、昨年11月に女性との不倫関係が報じられ、国民民主党から3カ月間の役職停止処分を受けました。玉木氏は3月4日に代表に復帰し、この件について改めて陳謝しています。この役職停止期間は、通常国会における「103万円の壁」引き上げ問題を中心とした自民党・公明党・国民民主党の三党協議が「最大の焦点」とされていた時期と重なりました。
玉木氏の不倫と役職停止が三党協議に与えた影響は非常に大きいと言えます。
交渉担当者の変更と党内対立
玉木氏の役職停止に伴い、三党協議の国民民主党側の交渉担当は古川元久代表代行兼税調会長に交代しました。しかし、古川氏は旧大蔵省入省年次で玉木氏の5期先輩であり、強いライバル意識を持っていたとされています。そのため、古川氏はあえて玉木氏に相談することなく自民党の宮沢洋一税制調査会長との交渉を進めた結果、国民民主党内で主導権争いが表面化しました。
協議の迷走と決裂
交渉が大詰めの段階を迎えた昨年12月中旬には、玉木氏が腹心の榛葉賀津也幹事長を通じて自民党の森山裕幹事長と新たな合意を確認するという事態が発生しました。これを知らされていなかった古川氏が激怒し、3党協議を打ち切るという想定外の行動に出ました。自民党幹部もこの時点から「壁引き上げ問題」が暗礁に乗り上げたと認識しています。
自民党の戦略変更
この混乱を受け、自民党の宮沢税調会長は森山幹事長の了解を得て、実質協議を当分棚上げとし、通常国会開幕後もすべてを予算委員会などの表舞台での協議の結果に委ねる戦略に変更しました。
玉木氏の復帰と党内の不満
3月4日に代表に復帰した玉木氏は、この交渉の時期に意思決定に関われなかったことを「本当に申し訳なく思っている」と述べています。しかし、党内には、玉木氏の不在中に古川氏らが交渉を進めたことに対する不満や、与党との協議決裂に対する執行部への批判も存在します。若手議員からは、与党が日本維新の会との連携を優先することで「わが党は完全に軽視されている」との不満も出ています。
国民民主党内の権力争いは、玉木氏の不倫問題以前から存在していた可能性がありますが、玉木氏の役職停止によって顕在化したと言えるでしょう。玉木氏と古川氏の間のライバル意識は、交渉の方針や進め方において明確な対立を生み出し、党内の一体感を損なう要因となりました。玉木氏が復帰後も、党内には執行部への不満や批判が残っており、今後の党運営においても権力バランスが注目されます。
玉木氏の代表復帰後、国民民主党は夏の参議院選挙で21議席以上の獲得を目指し、「手取りを増やす政策」の実現に注力する姿勢を示しています。しかし、「103万円の壁」を巡る三党協議は決裂し、自民・公明両党は日本維新の会などと連携して独自の税制改正修正案を提出する方針であり、玉木氏の不倫問題が引き起こした党内の混乱は、政策実現に向けた他党との連携にも影響を与えている可能性があります。
玉木氏周辺からは、安易な妥協よりも強硬な姿勢を維持することで参院選での支持拡大を期待する声もありますが、永田町関係者からは、公明党を含む他党による「玉木潰し」の動きが加速するとの見方も出ており、玉木氏の今後の政局運営は依然として不透明な状況です。国民民主党は、与党が提出する「最終案」についても「到底、予算案や税制改正案には賛成できない」と反発していますが、予算成立後の自公国協議再開は拒まない姿勢も示しています。