国民民主党が要求している「103万円の壁上限引き上げ」ですが、与党公明党側から850万円案が出ました。
年収の段階別に、最大で年収850万円まで税金が控除される案
公明党の西田実仁幹事長は22日、所得税が生じる「年収103万円の壁」引き上げに関する自民、国民民主との3党協議を巡り、年収制限の上限を850万円とする新たな案について「今できる最大限の手を打つとの覚悟で示した」と述べた。
国民民主党が要求を一切曲げず、税収減による他の公共サービスへの悪影響の責任を与党自民党・公明党に押し付ける態度に辟易している与党側。
こうなるとお互いの譲歩により妥協点を見つけることは不可能であり、他方、日本維新の会との合意形成がほぼ確実であろうという状況となり、であれば与党としては国民民主党の幼児性のわがままにこれ以上付き合う必要は無いでしょう。
実際自民党側からも、高校無償化を軸とした維新案を飲む一方、国民民主党案に対しては冷めた言動が出てきています。
公明党としては、自民から辟易した声が出てきたタイミングで、国民民主党が妥協可能であろう案を提示し主導権を握ろうということだと思います(あくまでも推測です)。
さていきなり日経の記事を貼り付けましたが、これだとわけわからないのでもう少し。
公明党案の詳細
年収103万円の壁をめぐり与党側は、これまでに示した年収によって2段階で壁を引き上げる自民党案とは異なる、4段階で壁を引き上げる新たな公明党案を国民民主党に示しました。
公明党案の考え方はNTVのサイトを見れば一発で理解できるのですが、国民民主党の「無条件(超富裕層含む)で、年収の壁を178万円まで引き上げる」というもの。これに対し、公明党案は年収850万円まで段階的に壁を控除額を変えて控除するというもの。
国民民主党の主張を丸々飲むと財源が7.8兆円前後必要であり、一般会計(年度頭時点での国家予算と考えていいです)の5~10%に相当する超巨大なもの。
こんな事を行えば政府・地方が行う公共事業が機能不全に陥るので、いかにして予算規模を引き下げて国民民主党案をなるべく実現できる案を模索してきたというのが与党の考えで、その末に出てきた案です。
ただNTVの記事からは具体的に必要となる予算の規模が分からないので、実現性はわかりません。国民民主に飲ませる前に、政府自民党が良しとするかすら不明。
ただ、この案ですら国民民主党が飲まないのであれば、三党協議はご破産になるでしょう。
ところで世帯年収850万円ってのは、年収上位11%以内に入る世帯ってことなのだが・・・そこまで税制優遇する意味あんのか?!国民民主に至っては、そもそも上限事態無いから超富裕層にまで優遇を与えろって言っているのですが
ここまでの103万円の壁
ここまでに出てきた「103万円の壁」騒動へのリンクを貼っときます。
先の衆院選で石破茂政権は少数与党となってしまい、野党のどこかの政党の協力を得なければ法案を通せない事態に陥りました。
そこで国民民主党は「103万円の壁引き上げ」という、財源規模で一般会計の5~10%に相当する、普通なら実現不可能な要求を突きつけるに至っています。
問題は、それによるあらゆる不具合の責任を与党に押し付ける、それも暗黙的に押し付けたのではなく明言してしまったために初動時点から騒動になっていました。国民民主は要求は出すが責任は取らない!と明言したことになりますので。
衆院選が秋口に行われたことから、この要求は年末に開始されました。調整して早ければ来年度から適用されるやろなあ・・・と思っていたところ、国民民主党から「2024年内に修正しろ」という無理難題が出てしまう始末。
年末に国会を開いて法案を提出可決成立させ制度を整備し施行する、11月初時点でこのような事を言われても不可能ですので、与野党の支持者問わずまともな人の間で騒動になりました。
特に財務会計にかかわる仕事を行う人たちにとっては恐怖で、万が一法案が施行されるとそこから会計システムの回収が入り、回収が完了してから社員の給与計算をやり直す必要があるという地獄が待っていました。
しかしその直後11/11に、国民民主党の玉木雄一郎代表の不倫問題が勃発し、国民民主党はこの要求を出している場合ではなくなりました。
103万円の壁に関する自公国3党協議は税調を中心として行っていましたが、その国民民主党側の窓口は古川元久税調会長でした。
会議早々席を蹴るなど、調整の相手として用を為さない問題があったのですが、税調会長であれば党に持ち帰って主張を変える可能性があるか・・・?と思っていたところ、玉木氏が不倫の責任をとって役職停止となり、代表代行である古川氏が一時的に党のトップとなってしまい、妥協の期待もできなくなりました。
役職停止となった玉木雄一郎氏ですが、役職停止中にもかかわらず好き勝手にべらべら喋った結果、与党のみならず国民民主党側も大混乱に陥ります。
その後財源について、古川代表代行がフジテレビの番組で突如「103万円の壁引き上げの財源は地価税課税」と発言。「手取りを増やすと言っておきながら増税するのか」と騒動になると、「党として言ったつもりはない」と前言を撤回する事件が起きます。
さらに問題なのは、先の古川氏の地価税発言を「党として決めたものではありません」と、役職停止中の玉木雄一郎氏がX(旧ツイッター)で言明した点です。現時点で代表相当であるはずの古川代行の発言を、現時点で権限を停止されている玉木氏が否定・・・?
国民民主党のガバナンスは、一体どうなっているのか?
年が明けた後も三党協議は開催されず、その間に日本維新の会が「高校無償化」を与党に飲ませる形で自公維三党協議を進め、合意目前という段階になりました。
その段階になってようやく自公国協議が2ヶ月ぶりに再開されましたが、国民民主党は相変わらず原理原則を曲げず、財源の責任も取らないという取り付く島のない状態で、調整は進みません。
そのまま自公国協議は特に進展が無いのですが、国民民主党からまた問題が発生します。
マスコミを前に榛葉賀津也幹事長が「自公国103万円の壁の議論が進まないのは日本維新の会に責任がある」と発言。
これを受けて日本維新の会・吉村洋文共同代表から反発する声明、また前原誠司共同代表からも「対面で話そう」と挑発されると、榛葉氏は「維新のせいなどと言っていない」「マスコミに捻じ曲げられた」と主張しました。マスコミインタビュー中の発言なのに・・・
悪いことに、その言い訳の最中「議論が進まない原因は自民党だ!」と、よりによって協議相手に責任をなすりつけてしまいました。
今回の公明党案はこの状況で出てきたのですが、こうなってしまうと国民民主云々以前に自民党が飲まないんじゃないかという状況です。