前回の「衆院選が終わりました。」で書いた通りですが、つまみ食い的に政策調整する野党政党にとっては「自らの政策を実現できる一方、それによる不具合の責任は与党になすりつけてしまえば良い」という意味で、無責任な手法です。
しかし与党としては政策をすすめるために、この理不尽を飲まざるを得ないという側面もあります。
- 「103万円の壁」を178万円まで引き上げると、税収は7.6兆円減る
- 経済浮揚効果はおおよそ1.25兆円・・・野村総研・木内氏試算
- 玉木雄一郎「皆さんの手取りが7兆ぐらい増える」←どんな試算したんだよ?
- 信者化してた・・・
「103万円の壁」を178万円まで引き上げると、税収は7.6兆円減る
また、財源にも課題が。政府の試算によると、178万円まで引き上げた場合、7兆6000億円ほど税収が減るだけに…。
2024年度の一般会計(=国家予算)は112.7兆円です。実際には補正予算が乗ってくるので倍ぐらいにはなってくるのですが、年度の頭で予定した額がこれで、ざっくり100兆円を超えた数値なので覚えやすいと思います。
ここから税収が7.6兆円減るという試算ですので、国家予算が7%弱、おおざっぱに言って5%~10%程度が消えます。かなり大きなインパクトがあると思うのですが、この減収分を他の課税で賄うか、他の政策を切り捨てて予算を捻出しなければなりません。
仮に国債で賄うとすると、2023年度の国債発行総額205.8兆円に対して1%強。しかし、国債総額が毎年増え続けることになります。
経済浮揚効果はおおよそ1.25兆円・・・野村総研・木内氏試算
一方筆者は、103万円から178万円に拡大する減税策によって1,030億円程度の減税効果が生じ、また217億円程度の景気浮揚効果が生じると試算した
7.6兆円を消し去って得られる効果が、減税+景気浮揚効果の合計で都合1.25兆円・・・となると、割に合わないと言わざるを得ません。
そもそも「壁」と言っていますが、これは「この年収までは税制優遇しますよ」というラインです。これを変えたところで今度は「178万円の壁」が騒がれることになりますが、この上限を上げ続けるわけにもいきません。それを行うと、ほとんどの人が優遇対象となり、結果、単なる富裕層への課税となります。
逆に撤廃するとなると、単なる増税になる・・・
話を戻して、都合年1.25兆円の効果を出すために、7.6兆円の増税なり政策放棄を考えなければなりません。
「国民民主党は1.25兆円の効果を出しました!それにより発生する7・6兆円の問題は与党がなんとかしてね」では、あまりにも無責任がすぎます。
玉木雄一郎「皆さんの手取りが7兆ぐらい増える」←どんな試算したんだよ?
国民民主党の玉木雄一郎代表(55)が5日、国会内での定例会見に出席した。
同党が衆院選で看板政策として掲げた年収103万円を超えると所得税が課税される「年収103万円の壁」の見直しについて、178万円まで引き上げた場合、政府が国と地方合わせて7.6兆円ほどの税収減になると試算したとの報道について記者団から問われ「逆に7兆円ぐらい国民の皆さんの手取りが増えるということを、まず国民の皆さんに知っていただけたことは良かった」とけん制した。
国民民主党の玉木雄一郎代表は、経済効果を「7兆円ぐらい」と定例会見で喋っているのですが・・・。どうしてここぞという場面で、マクロ経済の問題をミクロ経済にすり替えるような詭弁を弄してしまうんですかね?
個人の手取りが増えると、今までそれを財源としていた政策も相変わらず問題なく遂行できるという謎理論でもあるんですかね?
これから自らの政党の主張を実現させようという時に、こんな詭弁を弄しては駄目でしょう。よほどの馬鹿でなければ騙されないし、所詮民主党崩れの誹りを免れません。デメリットにもきちんと向き合い、それ以上のメリットがあることを訴えることが責任ある政治家というものでしょう。
信者化してた・・・
いわゆる103万の壁を動かすと税収が減り、他の課税項目で増税するか政策をあきらめなければならなくなります。なので「国民民主党は自分の政策を実現するために、そのリスクを背負う覚悟はあるのか?」というお話なのですが・・・
ツイッターランドに書いたところ、突如スイッチが入って「103万の壁は壊さなければ駄目なんだあああ!!」と書いてきた人がいましてね。論点はそこではないのだが・・・
維新とかれいわとか日本保守党あたりを相手にしているような感じだ。