言っちゃった!
韓国が日本との通貨スワップを締結したい理由は、過去実際に通貨スワップを締結していた実績があることと、日本円が基軸通貨ではなくともハードカレンシーであることが理由です。日本円との間で通貨スワップという後ろ盾が締結できれば、韓国ウォンもそれなりの信用を得ることができます。しかし実益で言えば、韓国が日本からの輸入品の決済で使う日本円の保険にはなりますが、為替介入を目論む場合、都合が悪い面があります。なぜならウォン買いオペを行う前に日本円を一旦米ドルに転換しなければならず、現在の円安局面では不利になるためです。
韓国が「通貨スワップ」の締結にこだわる理由は為替介入目的なので、日本との通貨スワップを要求しているのはあくまでも保険。メインターゲットは米韓通貨スワップでしょう。但し前回米国が韓国との間で締結していたのは韓国銀行が介入に使えない為替スワップで、通貨スワップは実績がありません。米FRB(連邦準備理事会)は高インフレを抑え込むために金融引締、つまり米ドルの金利を上げて流通量を絞り、通貨の価値を上げる(=相対的に物価を下落させる)政策を行っています。韓国と通貨スワップを締結するなどという、米ドルを市場に流出させるような合意は間違っても行えない状態です。
韓国が、日本はもとより米国と通貨スワップを締結できる可能性は、皆無だと思います。存在しない可能性を求めて、尹錫悦大統領は勝ち目のない交渉のために国連総会の会場を駆け巡ります。日本に対してのゴタゴタは既に書いた通りですが、韓国は対米国でも言動を二転三転させています。
韓国では、オンラインメディア「聯合インフォマックス」から「米韓通貨スワップが週内(9/19週)にも発表される」という報道が出回っていましたが、21日に韓国の中央銀行である韓国銀行がこれを否定。但し情報源を明示していないことと、600億ドル相当という規模感が新型コロナ救済策として行われていた為替スワップと同等なため、おそらくこれを通貨スワップとミスリードした上で、情報を加工したのではないかと思います。
その一方で、22日には「韓国の為替当局の高官」が「為替レートなどのため、以前よりはるかに積極的に韓国が通貨スワップ協定の締結を(FRBに)持ち掛けているのは事実だ」と、インタビューに答えています。自分勝手な要求を一方的に出すだけであれば確かに好きなだけできますが、通貨スワップ協定は二カ国の中央銀行同士が締結するものであり、中央銀行である韓国銀行を差し置いて韓国政府の高官が締結できるわけがないのです。この辺も事態をややこしくしている点ですが、韓国が自分や相手の責任と権限を無視して突っ走るのは、珍しいことではありません。
言葉通り、「韓国が一方的に通貨スワップという要求を出し続けているが、何の回答も得られていない」ということでしょう。それでも何としても食い下がりたい韓国なのですが、国連総会の場で尹錫悦大統領が致命的な失態を犯してしまいました。
21日の国連総会の場で、米国のバイデン大統領が、感染症対策として60ドルの拠出を表明しました。その後の記念撮影の場で、尹錫悦大統領は側近に「もし、こいつらが議会で可決しなかったら、バイデンのクソメンツは丸つぶれだな?」と、バイデン大統領を侮辱する発言を行ったのです。その瞬間が映像に捉えられており、韓国内でまたたくまに広まり、騒動となってしまいました。
こうなっては、米国に頼み事をしている場合ではありません。こうなってくると話はすでに韓国経済どころではなく、韓国大統領の進退や米韓同盟の崩壊といった可能性を論じる段階に入ってしまいます。
09/27追記:与党議員が初報のMBSを告訴、大統領府は「米国から問題ないという反応をいただいた」
尹錫悦氏の暴言問題で、信じられないことが次から次へと起こっています。まず9/26に韓国与党「国民の力」のイ・ジョンベという議員が、問題発言を最初に報道した韓国MBSの社長・編集長・記者を「虚偽事実流布による名誉毀損および偽計による業務妨害容疑の共謀共同正犯」として警察に告発したとのことです。
「虚偽」「義兄」「事実誤認」などの単語を並べ立てていますので、「そもそも尹錫悦氏は暴言を吐いていない」という前提での告訴だと思います。
その一方で、韓国政府のキム・ウンヘ広報首席は問題発言の翌日(9/22)、米国NSC等に「バイデン大統領や米議会を狙ったものではないと釈明」したとのことです。問題発言が「あった」前提で、ターゲットが異なるとの釈明です。この時点で既に、イ・ジョンベ議員の告訴内容と相違が発生しています。
問題は、キム・ウンヘ氏が「NSC側はこれを承知し、問題がないという反応を示した」と説明している点です。二カ国間の協議内容が韓国側からのみ出てきており、米国側からは何ら発信されていません。
韓国の報道で、相手の反応について「~という反応を示した」という言い回しもよく見かけますが、これも韓国側が事象を勝手に都合よく曲解する場合によく使われる表現方法です。恐らく、キム・ウンヘ氏が事実を曲げて発言しているのだと思います。
09/27追記:米国に守ってもらうけど米国に協力はしない
尹錫悦氏の侮辱発言問題は、おそらく広報首席による曲解発言も加わったことで、さらに米韓関係を悪化させる要因になっています。この問題を終息させるような妙案が出て来ない状態ですが、9/27に尹錫悦氏と韓国国防部が火に油を注ぐ発言を繰り返しています。
事の発端は、エイブラムス前在韓米軍司令官が「台湾有事の際、在韓米軍を投入する可能性があり得る」といった旨の発言を、ラジオフリージア(RFA)で発言したところから始まります。
これに対し、国防部のムン・ホンシク副報道官は定例会見で「ラカメラ現司令官は、在韓米軍は北の侵略を抑止し、対応する任務の遂行を最優先にしていると述べた」と発言してしまいました。これも言うまでもなく、ラカメラ司令官の実際の発言ではなく、ムン副報道官が勝手に喋っているだけです。しかも、通常任務で対北抑止を最優先にしているからといって、台湾有事の際に傍観しているという意味でもありません。これも韓国によくある「相手の心情や発言を、自分にとって都合よく改変する」行為の一つだと思います。
問題は更に続き、またしても尹錫悦氏が「中国が台湾を攻撃すれば、北も挑発を行う可能性が高い」「韓国では強力な韓米同盟を基に北の挑発に対応することが最優先の課題になるだろう」などと発言しています。これでは「韓国が北朝鮮に侵略された時は米国に守ってもらうが、米国が台湾有事で困ってる時には助けないし、在韓米軍も出動させない」と言っているようなものです。
在韓米軍が台湾有事で臨戦態勢になった場合に、韓国軍を協力させるか否かという話であればまだ分かるのですが、在韓米軍となると指揮権は当然米国にありますので、韓国の大統領が否定することはできません。せいぜい「在韓米軍が台湾有事に対応している間、韓国軍は全力で北朝鮮からの攻撃に対処する」(協力はしないけど背後は守る)程度でしょう。
韓国ですが、次から次へと火種を作っています。